私たちは聖霊を受けた時に、キリストの証人として生きる使命をおびています。
今日の湯澤神父様のお説教の大要をご紹介します。
『今から十数年前に、東京の小教区で「聖霊降臨」を迎えた時に、ある女性から「今日は逆バベルですね」と話しかけられ、「あっ」と。創世記に出てくる「バベルの塔」のことだったのですが、そうだろうか?と思ったわけです。聖霊降臨の出来事は、同じようなところもあるし、違うところもあり、ある意味関連しているのかもしれません。
皆さんもご存知のように「ノアの方舟」の出来事の後に、ノアは神と契約を結びます。神は「この世界はどんなに駄目でもリセットはしない」と約束をして虹を架けるわけです。そして天地創造と同じ言葉を言いました。「生めよ。ふえよ。地に満ちよ。全世界に散らばっていきなさい」と。
新たな創造をということなのかもしれませんが、その後に「バベルの塔」のお話があるわけです。人間は神の言葉に応えたかというとそうではなかった。世界中に散らばるように、と言われていたにも関わらず、人間がしたことは何かというと、たとえ神であっても散らばらされないようにしよう、ということでした。これを見た神が人間を全世界に散らばらせたという話です。
どんないいことをしたとしても、神の意図に反することは、よくないことということで、神の創造の意図を実現させていくことが大切なこというお話です。
「逆バベル」と言った人に「何でそうなの?」と聞いたところ、バベルの塔では皆は散らばらされたけれど、聖霊降臨では一つに集めた、という理由でした。
確かに今日の集会祈願では、「きょう祝う聖霊降臨の神秘によって、あなたは諸国の民を一つの聖なる教会に集めてくださいます。」とありますが、それだけではないわけです。続きでは、「聖霊を世界にあまねく注いでください。教会の誕生に当たって行われた宣教の働きが、今も信じる民を通して続けられ、豊かな実りをもたらしますように。」とあります。
先週の第一朗読「使徒言行録」を読むとよくわかると思うのですが、キリストが天に昇っていく際にこう語られました「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。 そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、 また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」 と、全世界に行ってキリストの証人になっていくということを命じました。
この時に、ただ茫然と天を見つめていた弟子たちに天使たちが言うわけです。「ガリラヤの人たち、なぜ天を見上げて立っているのか。」と、ボーとしていないで、今言われたことを実行しなさいと言ったのです。そしてそれが実行されたことを示すのが、今日の第一朗読で語られた五旬祭の出来事です。使徒たちは決して急に語学が達者になって、いろいろな言語を話せるようなったということではなく、聖霊の力で同時通訳がされたわけでもありません。
ここで、言わんとしていることは、ここに出てくる全域に福音が伝えられたということです。これらの地域はその当時の世界全域を現しており、実際に弟子たちの中には、遥か遠方まで宣教に行ったという伝説が残っています。今日語られた出来事は、使徒言行録の初期の段階で宣教が実際に行動に移され、様々な国で福音が伝えられたということを現しています。
この聖霊降臨が何を意味しているか。それは、この新しい命を受けて、全世界に新しい命を生むために散らばって行ったということです。ですから、別に「バベルの塔」の反対ということではなく、神の意図は”創造”時から同じということです。神のいのちを全世界に広めていくということです。
そういう意味では、私たちもそういう使命を受けているということです。どこにあってもキリストの証人として生きる使命を、私たちは聖霊を受けた時点で授かっているということです。』