湯澤神父様の福音メッセージを聖書朗読箇所と併せてご紹介します。
【福音メッセージ 湯澤神父】
2022年3月13日 四旬節第二主日(ルカ、9章28~36節)
✚ Pax et Bonum
兄弟姉妹の皆さん、
今日、四旬節第二の主日の福音は、主の御変容の箇所です。『聖書と典礼』にあるように、受難の予告に続いて「受難を通しての栄光の姿を弟子たちにかいま見させる」出来事と理解されています。
最初、最も新しい翻訳である聖書協会共同訳で読んだとき、驚きを感じました。「ペトロと仲間は、眠りこけていたが、目を覚ますと」イエス様の他に二人の人がいて、立ち去ろうとしていた、と言う訳になっていました。マルコもマタイも寝ていないのに、なぜルカは三人が寝ていたと書いたのだろう、という疑問が起こりました。しかし、『聖書と典礼』では寝ていません。「ペトロと仲間は、ひどく眠かったが、じっとこらえていると」と訳されており、他の二つの福音書との整合性を保っています。
どちらが正しいかは、専門家ではないのでわかりませんが、第一朗読のアブラム(アブラハム)も大切な場面で寝てしまっています。神様だけが裂かれた動物の間を通り、契約の履行義務が生じますが、寝ていたアブラムにはない。ですから、この契約自体が神様のお恵みそのものです。
もう一つ頭に浮かぶのは、ゲッセマネの場面です。ここでもこの三人は寝てしまっています。イエス様の引き受ける十字架のお恵みを知ることなく。
このことを思い巡らせていて、フッと思いました。神様の溢れるようなお恵みのときに、私は、あたかも眠っている人であるかのような者なのではないのか、と。そして、今の季節を考えるとき、四旬節は、イエス様の死と復活という大きなお恵みに想いを寄せるときなのでは無いでしょうか。あたかも眠っていた弟子たちのような私たちに、洗礼を通してこのお恵みに与らせて下さった神様に心を向ける回心のときではないでしょうか。
湯澤民夫
【聖書朗読箇所】
救いの源である神よ、
あなたはひとり子イエスを、
受難をとおして栄光に導かれました。
十字架の道を歩まれたキリストに従うことができるよう
わたしたちの希望と勇気を強めてください。
集会祈願より
第1朗読 創世記 15章5~12、17~18節
主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」そして言われた。「あなたの子孫はこのようになる。」
アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。
主は言われた。
「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。
わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」
アブラムは尋ねた。
「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、
何によって知ることができましょうか。」
主は言われた。
「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とを
わたしのもとに持って来なさい。」
アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、
それぞれを互いに向かい合わせて置いた。
ただ、鳥は切り裂かなかった。
禿鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。
日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。
すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。
日が沈み、暗闇に覆われたころ、
突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。
その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。
「あなたの子孫にこの土地を与える。
エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで。」
第2朗読 フィリピの信徒への手紙一3章17~4章1節
兄弟たち、皆一緒にわたしに倣う者となりなさい。
また、あなたがたと同じように、
わたしたちを模範として歩んでいる人々に目を向けなさい。
何度も言ってきたし、今また涙ながらに言いますが、
キリストの十字架に敵対して歩んでいる者が多いのです。
彼らの行き着くところは滅びです。
彼らは腹を神とし、恥ずべきものを誇りとし、
この世のことしか考えていません。
しかし、わたしたちの本国は天にあります。
そこから主イエス・キリストが救い主として来られるのを、
わたしたちは待っています。
キリストは、万物を支配下に置くことさえできる力によって、
わたしたちの卑しい体を、
御自分の栄光ある体と同じ形に変えてくださるのです。
だから、わたしが愛し、慕っている兄弟たち、
わたしの喜びであり、冠である愛する人たち、
このように主によってしっかりと立ちなさい。
福音朗読 ルカによる福音書 9章28b~36節
イエスは、ペトロ、ヨハネ、およびヤコブを連れて、祈るために山に登られた。
祈っておられるうちに、イエスの顔の様子が変わり、服は真っ白に輝いた。
見ると、二人の人がイエスと語り合っていた。
モーセとエリヤである。
二人は栄光に包まれて現れ、
イエスがエルサレムで遂げようとしておられる最期について話していた。
ペトロと仲間は、ひどく眠かったが、じっとこらえていると、
栄光に輝くイエスと、そばに立っている二人の人が見えた。
その二人がイエスから離れようとしたとき、ペトロがイエスに言った。
「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。
仮小屋を三つ建てましょう。
一つはあなたのため、一つはモーセのため、もう一つはエリヤのためです。」
ペトロは、自分でも何を言っているのか、分からなかったのである。
ペトロがこう言っていると、雲が現れて彼らを覆った。
彼らが雲の中に包まれていくので、弟子たちは恐れた。
すると、「これはわたしの子、選ばれた者。これに聞け」
と言う声が雲の中から聞こえた。
その声がしたとき、そこにはイエスだけがおられた。
弟子たちは沈黙を守り、見たことを当時だれにも話さなかった。